- 그린란드 빙상 코어의 분석 -

국립극지연구소를 중심으로 한 연구그룹은 그린란드 빙상내륙부에서 굴삭된 약 90미터 길의 만년설(눈과 얼음의 중간상태) 코어를 이용하여 만년설 밀도를 증가시켜 얼음으로 변화되는 모습(빙화)을 상세하게 조사하였다. 그 결과, 늦가을부터 다음 해 초여름까지의 강설에 기원한 층은 여름부터 가을까지의 강설에 기원한 층과 비교하여 항상 월등하게 압밀이 진행된 것을 알아내었다.

그리고 이러한 압밀이 뛰어난 층에는 빙결정의 변형을 촉진시키는 물질로서 “불소화물 이온”과 “염화물 이온”이 상대적으로 고농도로 포함되어 있다는 것을 알았다. 이러한 분석으로부터 압밀속도를 지배하는 요소는 (1) 빙상의 표면부근에서 일사의 효과로서 나타나는 눈의 형태의 계절변동과 (2) 불소화물 이온과 염화물이온량에 의해 빙결정의 결정격자 중 전위의 운동이 변조하는 것일 가능성이 높다고 제기하였다. 또한 만년설의 빙화에 의해 공기가 얼음 속에 갇혀 유통되지 않을 때까지의 시간은 이러한 두 가지 요소에 의해 결정되는 것을 나타내고, 종래 “얼음 중에 갇힌 공기의 양과 산소, 질소비율이 일사량에 따라 변동한다”는 경험적 사실을 합리적으로 설명할 수 있다는 것을 나타낸다.

늦가을부터 다음 해 초여름까지의 강설에 기원한 만년설 층은 여름부터 가을까지의 강설에 기원한 만년설 층과 비교하여 항상 탁월한 압밀, 변형이 진행된 것을 알아내었다. 그리고 그러한 압밀층에는 “불소화물 이온”과 “염화물 이온”이 상대적으로 고농도로 포함되어 있는 것을 발견하였다. 불소화물 이온과 염화물 이온은 얼음결정의 변형을 촉진시키는 물질로서 실험 물리화학의 분야에서는 1970년 전후에 알려져 있었지만, 빙하 및 빙상과 같은 쳔연 얼음에서 변형과 농도의 상관이 확인된 것은 처음이다.

불소화물 이온과 염화물 이온은 얼음의 결정격자 중 산소원자와 치환하여 결정격자에 점 결함을 형성하는 경우가 있다. 그러면 결정의 전위가 발생하기 쉬워 결정 변화가 촉진되는 것으로 알려져 있다. 이 메커니즘에 의해 만년설의 압밀, 변형이 촉진되었다고 해석할 수 있다.

한편, 압밀, 변형은 칼슘이온 농도와 높은 상관을 가지고 있다. 그러나 칼슘은 그 얼음 가운데에서의 존재상태가 “염 미립자”라는 고체입자이기 때문에 결정의 소성변형을 변조시키는 원인물질로서 존재하지 않는다고 결론지었다. 그리고 여름 일사에 의한 눈의 변형이 압밀, 변형을 지배하는 요소로서 지배적이라는 것을 지적하였다. 이것은 남극빙상의 만년설 연구에서 밝혀진 것이지만, 그린란드 빙상의 만년설 연구에서는 간과했던 요소이다.

이러한 분석으로부터 본 연구에서는 만년설의 압밀속도를 지배하는 요소가 (1) 빙상의 표면 부근에서 일사의 효과로서 나타나는 눈 상태의 계절변동과 (2) 얼음 결정의 결정격자 중의 전위 운동이 불소화물 이온과 염화물 이온의 존재로 일어나는 것을 제기하였다. 만년설의 빙화에 걸리는 시간은 이 두 가지 요소의 상호작용이라고 생각할 수 있다. 즉, 여름철 일사가 강할수록 여름에서 가을까지의 적설층의 변형이 진행되고, 결과로서 그 부분의 압밀, 변형이 방해된다. 이것에 대해 불소화물이온과 염화물 이온이 비교적 많은 늦가을에서 초여름까지의 적설층에서는 이온량에 따라 압밀, 변형이 촉진된다.

또한 여름 일사량과 불소화물 이온 및 염화물 이온의 양이라는 두 가지 요소가 만년설의 빙화 속도에 영향을 주고 있기 때문에 이러한 요소가 얼음 속에 가둔 공기의 양 및 산소, 질소비율과 상관있다는 것을 합리적으로 설명할 수 있다. 즉, 다음과 같은 메커니즘이다. 얼음 속에 공기가 들어가는 것은 만년설의 빙화와 함께 진행한다.

고립된 기포에는 상부의 적설 하중이 압력으로 작용하지만, 개방공극에는 압력이 작용하지 않는다. 이 압력차이 때문에 고립 기포 내의 공기 분자가 얼음의 결정격자를 통과하여 개발공극으로 확산된다. 때문에 만년설의 빙화 속도가 느리다. 또한 확산계수는 질소분자보다 산소분자가 높기 때문에 산소, 질소비율은 저하된다.

 

[출처 = KISTI 미리안 『글로벌동향브리핑』/ 2014년 10월 6일]

 

 

 

 

国立極地研究所（所長：白石 和行）の藤田 秀二 准教授らを中心とした国際研究グループは、グリーンランド氷床内陸部で掘削された約90メートル長のフィルン（雪と氷の中間状態）コアを用いて、フィルンが密度を増し、氷に変化していく様子（氷化）を詳細に調査しました。その結果、晩秋から翌年の初夏にかけての降雪に起源をもつ層は、夏から秋にかけての降雪に起源をもつ層と比べて、常に卓越して圧密が進んでいることを見いだしました。さらに、そうした圧密卓越層には氷結晶の変形を促進させうる物質として「ふっ化物イオン」と「塩化物イオン」が相対的に高濃度で含まれていることが分かりました。これらの分析から、圧密速度を支配する要素は、（1）氷床の表面付近で、日射の効果として起こる雪の変態の季節変動と（2）ふっ化物イオンと塩化物イオンの量により、氷結晶の結晶格子中の転位の運動が変調すること、である可能性が高いことを提起しました。また、フィルンの氷化にともなって、空気が氷中に閉じ込められて流通しなくなるまでにかかる時間は、これらの2要素によって決まることを示し、従来の「氷中に閉じ込められる空気の量と酸素・窒素比率が日射量に応じて変動する」という経験的事実が合理的に説明できることを示しました。

 

本研究は、氷床を構成する氷が圧密・変形するメカニズムについて、「夏の日射による初期変態」と

「ふっ化物イオン、塩化物イオンなどの不純物」という2つの重要な支配要素があることを提起しました。この知見は、アイスコアの研究で過去の気候変動の発生年代や氷期・間氷期といったイベントが発生し、持続する期間の長さを解析するうえでの基礎的な情報となります。

極地氷床の中で発生する結晶の特性や変形などの様々な物理過程を理解するためには、雪が圧密を経てフィルン（雪と氷の中間状態）、そして、氷に変化していく過程（氷化）を解明することが重要な基礎となります。

 

雪がひとたび氷床表面に堆積したとき、表面の気温や降雪量、日射、風などの様々な環境に応じて積雪の初期の変質である「変態」が発生します。そして、断続的に雪が降ると積雪により雪が圧密・変形を受けるため、フィルンの状態を経て氷に変化していきます。こうした積雪の圧密・変形と氷化の過程は、氷の粒子間にある空隙が気泡として氷のなかに閉じ込められるプロセスとも言えます。

 

過去のアイスコアの研究によって、アイスコアから抽出される空気の量や酸素・窒素比率が、現地の夏の日射強度と同期関係にあることが経験的にわかっています。また、南極氷床の内陸部で採取したアイスコアについては、夏期の日射が雪に与えた変態の効果が深部まで維持されることが指摘されています。夏に強い陽射しを受けた雪の層ほど変形しにくくなり、より長い時間をかけて氷に変化するのです。これに対して、グリーンランドや南極での一部のアイスコアではカルシウムイオンの分布と雪の圧密・変形に強い相関が見いだされており、カルシウムイオンに関連した作用によって圧密・変形の程度が決まることで、夏期の日射が雪に与えた変態の効果はおおむね消去されてしまうとの考え方も提起されています。

 

結果として、次のような２つの謎が残されたままになっていました。

 

（1）アイスコア中の圧密・変形を支配する要素は何か？特に、カルシウムイオンあるいは関連イオンの役割は何か？そして、夏の日射による変態が変形を規定すると考えるメカニズムとの関係をどう位置づけることができるか？
（2）アイスコアから抽出される空気の量や、酸素・窒素比率が、現地の氷床の夏の日射強度の経験的な同期関係があるのはなぜか？

 

これらの２つの謎に対し、回答あるいは一定の見解を得ることが、長年の課題でした。

本研究グループは、北グリーンランド氷床深層掘削計画（North Greenland Eemian Ice Drilling：NEEM計画）でNEEMキャンプ（図1、2）において2010年に掘削された88.55m長のフィルンコア（図3に例）と、2012年に表層2mから採取したフィルンを用いて、物理的な構造を調査しました。まず、それぞれの層のマイクロ波誘電率テンソル（※1）を測定し、この値からミリメートル分解能での密度および空隙の三次元異方性構造を分析しました。さらに、積雪のあった季節を同定するために酸素同位体比を求め、さらに不純物イオンの種類を同定し、その量を求めるために主要イオンの分析を行いました。マイクロ波誘電率テンソルの計測手法は、フィルンを構成する氷と空隙の空間的な異方性を連続かつ迅速に計測できるという点で革新的でした。従来は氷と空隙の空間的な構造の調査には、Ｘ線吸収コンピュータートモグラフィ（Ｘ線CT）を使用しており、計測とデータ処理の手間がとても大きいものでした。

 

本研究によってはじめて、グリーンランドのフィルンの層構造について、圧密・変形と、幾何学的な異方性、堆積の季節起源や不純物濃度との関係を調査できるデータセットが得られたことになります。

晩秋から翌年の初夏にかけての降雪に起源をもつフィルン層は、夏から秋にかけての降雪に起源をもつフィルン層と比べて、常に卓越して圧密・変形がすすんでいることを見いだしました（図4に模式図）。さらに、そうした圧密卓越層には、「ふっ化物イオン」と「塩化物イオン」が相対的に高濃度で含まれていることを発見しました（図4）。ふっ化物イオンと塩化物イオンは、氷結晶の変形を促進させうる物質として、実験物理化学の分野では1970年前後には知られていましたが、氷河や氷床のような天然の氷で変形と濃度の相関が確認されたのは初めてのことです。

 

ふっ化物イオンと塩化物イオンは、氷の結晶格子の中の酸素原子と置換し、結晶格子に点欠陥（結晶物質を構成する原子配列の点状の乱れ）を形成することがあります。すると、結晶の転位（結晶面のずれ）が起こりやすくなり、すなわち結晶の変形が促進されることが知られています。このメカニズムによって、フィルンの圧密・変形が促進されたと解釈できます。

 

一方、圧密・変形はカルシウムイオン濃度とも高い相関をもっていました。しかし、カルシウムについては、その氷のなかでの存在状態が「塩微粒子」と呼ばれる固体粒子であることなどから、結晶の塑性変形を変調させる原因物質としてはありえないと結論しました。さらに、夏の日射による雪の変態が圧密・変形を支配する要素として支配的であることを指摘しました。これは、南極氷床のフィルンの研究では明らかになっていたことですが、グリーンランド氷床のフィルン研究では見過ごされてきた要素です。

 

これらの分析から、本研究では、フィルンの圧密速度を支配する要素が、（1）「氷床の表面付近で日射の効果として起こる雪の変態の季節変動」と、（2）「氷結晶の結晶格子中の転位の運動がふっ化物イオンと塩化物イオンの存在で起こること」の2つであることを提起しました。フィルンの氷化にかかる時間は、これら２つの要素の相互作用と考えることができます。つまり、夏期の日射が強いほど、夏から秋にかけての積雪層の変態がすすみ、結果としてその部分の圧密・変形が阻害されます。これに対し、ふっ化物イオンと塩化物イオンが比較的多い晩秋から初夏にかけての積雪層では、イオン量に応じて圧密・変形が促進されます。

 

また、夏の日射量とふっ化物イオンおよび塩化物イオンの量という２種の要素が、フィルンの氷化スピードに影響を与えていることから、これらの要素が、氷中に閉じ込められる空気の量や、酸素・窒素比率と相関していることが合理的に説明できます。つまり、次のようなメカニズムです。氷中への空気の閉じ込め（クローズオフ）はフィルンの氷化にともなって進行します。クローズオフの開始から完了までの間には、先行して氷に閉じ込められた孤立気泡と、まだ氷床表面に空隙が通じている開放空隙とが共存しています。孤立気泡には上部の積雪の荷重が圧力としてかかりますが、開放空隙にはそれがかかりません。この圧力差から、孤立気泡内の空気の分子が氷の結晶格子を通過して開放空隙に向かって拡散します。このため、フィルンの氷化スピードが遅く、クローズオフの開始から完了までの期間が長いほど、閉じ込められる空気の量は減ります。また、拡散係数は窒素分子より酸素分子のほうが高いため、クローズオフの開始から完了までの期間が長いほど、酸素・窒素比率は低下します。このようにして、研究の背景にあった2つの謎に対する回答を提案しました。

現在、６万年をこえる年代をもつアイスコアの分析において、空気の量や酸素・窒素比率は、誤差が約２千年（標準偏差の２倍を誤差とした場合）と、最も信頼できるタイムマーカーであり、このタイムマーカーが存在しなければ、誤差は約６千年（同上）まで後退します（※2）。本研究は、フィルンの氷化スピードに影響を与える要素を提起することによって、アイスコア中の空気の量や酸素・窒素比率によるタイムマーカー解釈の物理的根拠を強化するものであり、過去の気候変動の発生年代や、氷期・間氷期といったイベント発生期間の長さを解析する研究の基盤となりえます。

 

 

 

[원문출처 : http://www.nipr.ac.jp/info/notice/20141002.html]