- 아프리카 빙하 위에서 새롭게 발견한 선태류 무성아(gemma)의 집합체
열대지역의 고산에 남아 있는 빙하는 기후변화의 영향을 받아 급속하게 축소되고 있으며, 가까운 장래에 소멸할 것으로 예상되고 있다. 한편, 열대지역의 빙하에 존재하는 생물, 특히 아프리카 대륙의 빙하생물에 관하여 지금까지 전혀 조사되지 않았다.
일본극지연구소 신영역융합연구센터 연구팀은 우간다와 콩고민주공화국의 국경에 있는 루웬조리(Rwenzori)산의 빙하 위 생태계를 조사하여 선태류를 중심으로 한 생물의 집합체가 빙하를 덮고 있다는 것을 발견하였다. 이것은 다른 지역의 빙하에서 볼 수 있는 미생물의 집합체와 다른 것이었다.
연구그룹은 2012년 2월과 2013년 2월의 2회에 걸쳐 루웬조리(Rwenzori)산의 빙하에서 관측조사를 수행하고, 이 빙하의 표면에 타원형을 한 흑색의 유기물 덩어리가 많이 분포하고 있다는 것을 발견하였다. 유기물 덩어리의 평균 크기는 장경 18.7mm, 단경 12.7mm, 두께 8.3mm, 중량 1.6g였다. 빙하상의 유기물 덩어리로서는 지금까지 cryoconite 입자라는 시아노박테리아를 중심으로 한 집합체가 보고되었으나, cryoconite 입자 크기는 0.2~2.0mm 정도이며, 이번에 발견한 유기물 덩어리는 cryoconite 입자와는 분명히 다른 새로운 것이었다.
현미경 관찰 결과, 유기물 덩어리는 주로 선태식물의 원사체와 그 위에 형성된 대량의 무성아에 의해 구성된 것을 알 수 있으며, 연구그룹은 이 유기물 덩어리를 빙하 선태 무성아 집합체(glacial moss gemmae aggregation, GMGA)라고 하였다. GMGA 중 코어 무성아는 그 형태적인 특징과 유전자 데이터베이스가 높은 상동성을 나타내기 때문에 남극에서도 보고된 이끼류인 Ceratodon purpureus라고 단정지었다.
그리고 본 종의 생리적인 정보를 얻기 위해 GMGA로부터 배양한 선태류 원사체 샘플과 GMGA 그 자체에 대해 배양온도를 변화시켜 각 온도에서 광합성 활성을 측정하였다. 그 결과, 각각 5도의 저온에서도 활성이 있지만, 지적(至適) 광합성 온도는 20~30도이며, 남극에서 보고된 동종의 지적 온도보다 높다는 것을 알았다.
통상적으로 빙하의 표면은 융해기라도 0도 부근의 온도이지만, 현지 GMGA의 내부온도는 일중 8~10도까지 상승하였다. 이것은 GMGA의 구조가 충분히 두껍기 때문에 빙하로부터의 냉기를 차단하여 일사에서 흡수한 열을 유지하기 쉽게 되었기 때문이라고 생각된다. 또한 연간 기온의 일주변화가 0도에서 5도까지 안정하여 장기적인 동결기간이 없는 열대 기상조건 등이 지금까지 다른 지역에서는 관찰되지 않는 본 종의 빙하 위로의 유입에 공헌한 것이 아닌가 추측된다. 한편 본 종이 선태류의 생활사의 주체가 되는 경엽체를 형성하지 않고 원사체 및 그 위의 무성아와 같은 형태가 되는 하나의 원인은 빙하 위의 저온과 강한 일사에 의한 환경 스트레스라고 추측하였다.
이번에 빙하 위에서 발견된 GMGA는 빙하가 녹아 후퇴한 식생이 아닌 암석 위에서도 건조한 상태로 다수 발견되었다. 이 건조된 GMGA에는 빙하 위에서는 존재하지 않았던 다른 이끼가 우점하고 있으며, 식생이 전혀 없는 암석 위에 토양과 같은 물질을 형성하였다. 이것은 GMGA를 중심으로 한 빙하 위의 생태계가 그 주변의 생태계와 직접적으로 연결되어 열대 고산식생에도 강한 영향을 미치고 있다.
(그림 1) 연구 조사지인 루웬조리산의 위치
(그림 2) (a) 조사지역의 빙하와 루웬조리산 최고봉, (b) 빙하표면을 덮은 흑색의 빙하 선태류 무성하 집합체, (c) 빙하 선태류 무성하 집합체, (d) 빙하 선태류 무성아 집합체의 단면도
(그림 3) (a-b) 빙하 선태류 무성하 집합체의 골격을 형성하고 있는 이끼, (c) 배양실험 후에 Ceratodon purpureus의 무성아에서 자란 원사체, (d) 유전자 실험에 이용한 Ceratodon purpureus 배양주의 원사체
熱帯地域の高山に残された氷河は、気候変動の影響をうけ急速に縮小しており、近い将来消滅すると予想されています。一方で、熱帯地域の氷河に棲む生物、とくに、アフリカ大陸の氷河生物については、これまでまったく調査がなされていませんでした。
植竹 淳 特任研究員（新領域融合研究センター／国立極地研究所）らは、ウガンダとコンゴ民主共和国の国境にあるルウェンゾリ山（図1）の氷河上の生態系を調査し、コケを中心とする生物の集合体が氷河を覆っていることを発見しました。これは、他の地域の氷河で見られる微生物の集合体（クリオコナイト粒）とは異なるものでした。
分析の結果、この集合体は、コケの未分化の糸状体である原糸体（注1）と、その上に形成される無性芽によって構成されていることがわかりました。さらに５領域の遺伝子マーカーの解析の結果、このコケはCeratodon purpureusという、熱帯から極地まで幅広く分布している種であると同定されました。本種の至適光合成温度は20－30℃と、一見すると0℃に近い氷河上での増殖に適していないと思われる結果が得られました。しかし、コケ無性芽集合体の内部温度は日中には約10℃まで上昇しており、このことが氷河を覆うような本種の大繁殖を促進させた要因ではないかと推測されます。この集合体には、コケ植物の他にも様々な微生物が棲息しており、近い将来にやってくるこの氷河の消失は、この特殊な生態系の消失をも引き起こすと予想されます。
冷たい氷河の表面は生物にとって生きづらい環境のように思えますが、実は様々な好冷性、耐冷性の微生物が生息しています。これまで生物圏としてほとんど無視されてきたこのような地域は、環境変動の影響を受け易いこと、また極域ではその面積が非常に広大であることから、生物圏として重要であるという認識が広がりつつあり、極域や中緯度地域の氷河を中心に研究がすすめられてきました。しかしながら、熱帯における先行研究例はほとんどなく、とくにアフリカの氷河においてはまったく研究報告例がありませんでした。
アフリカには赤道直下に氷河が現存している３つの高山：キリマンジャロ山（タンザニア）、ケニア山（ケニア）、ルウェンゾリ山（ウガンダ、コンゴ民主共和国）がありますが、これらの氷河は急速に融けて縮小し、近い将来には消滅してしまうと多くの研究で予測されています。
なかでも、アフリカ第三の高峰ルウェンゾリ山（5,109m）の氷河は（図1、図2a）、地球温暖化や湿度の低下などにより急速に後退しており、航空写真や衛星画像を使った研究から2020年ごろに消滅するのではないかと予測されています。そこで本研究グループは、消失が目前に迫っているにもかかわらず生物学的な調査がまったく行われていないルウェンゾリ山の氷河を対象として、現地の氷河生態系を理解する為の研究を始めました。
研究グループは2012年2月と2013年の2月の２回にわたり、ルウェンゾリ山の氷河：スタンレープラトー上での観測調査を行い、この氷河の表面に楕円形をした黒色の有機物塊が多く分布していることを発見しました（図2b）。有機物塊の平均の大きさは、長径18.7mm、短径12.7mm、厚さ8.3mm、重量1.6gでした（図2c）。氷河上の有機物塊としては、これまでにクリオコナイト粒というシアノバクテリアを中心とする集合体が報告されていますが、クリオコナイト粒の大きさは0.2－2.0mm 程度であり、今回発見した有機物塊はクリオコナイト粒とは明らかに異なる、新しいものでした。
顕微鏡観察の結果、有機物塊は主にコケ植物の原糸体とその上に形成された大量の無性芽（注1）により構成されていることが分かり（図2c、d；図3）、研究グループはこの有機物塊を氷河コケ無性芽集合体（glacial moss gemmae aggregation: GMGA）と名付けました。GMGA中のコケ無性芽は、その形態的な特徴と遺伝子データベースと高い相同性（注2）を示したことから、南極でも報告されている蘚類のCeratodon purpureusであると断定しました。
さらに、本種の生理的な情報を得るために、GMGAから培養したコケ原糸体2サンプルとGMGAそのものについて、培養温度を変化させて各温度における光合成活性を測定しました。その結果、それぞれ5℃の低温でも活性があるものの、至適光合成温度は20－30℃であり（図4）、南極で報告された同種の至適温度よりも高いことがわかりました。
通常、氷河の表面は融解期でも0℃に近い温度ですが、現地のGMGAの内部温度は日中に8－10℃まで上昇していました。これはGMGAの構造が十分に厚いことにより、氷河からの冷気を遮断し、日射で吸収した熱を保持しやすくなったためであると考えられます。また、年間を通して気温の日周変化が0℃から5℃で安定し、長期の凍結期間がない熱帯の気象条件などが、これまで他地域では観察されなかった本種の氷河上への侵入に貢献したのではないかと推測されます。一方で、本種がコケ植物の生活環の主体である茎葉体を形成せずに原糸体やその上の無性芽といった状態に留まっている一因は、氷河上の低温と強い日射による環境ストレスではないかと推測されます。
今回氷河上で発見されたGMGAは、氷河が融けて後退したばかりの植生のない岩の上でも、乾燥した状態で多数発見されました。この乾燥したGMGAには、氷河上には存在していなかった他の蘚類（Bryum sp.）が優占しており、氷河に削られたばかりで植生の全くない岩の上にいち早く土壌様の物質を形成していました。この事は、GMGAを中心とした氷河上の生態系が、その周辺の生態系と直接的に結びつき、熱帯高山植生にも強い影響を与えていることを示唆しています。
近い将来、気候変動などによってこの氷河が消滅してしまえば、この氷河上のコケ無性芽集合体とそれを中心とした特殊な生態系、氷河生態系と周辺の氷河への結びつきも消滅してしまいます。そして他の熱帯地域には、同様に近い将来に消滅する恐れのある氷河が多数存在しており、未だ全く研究の行われていないこれらの氷河の上にも、本研究のようにこれまで知られることのなかった特殊な生態系が存在している可能性があります。そのため熱帯氷河の生態学研究はまさに喫緊の研究課題であるといえ、今後は、より詳細な氷河生態系の形成プロセスを解明すると同時に、これらの消滅までをモニタリングしていく研究を進める必要があります。
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